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楼主: wewewe

[转载作品] (授权转载/生肉/长篇小说/完结作)東方楽曲伝(更新至第2章 ~外の世界~)

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 楼主| 发表于 2022-10-14 17:08:35 | 显示全部楼层
第26話 狂気

「う~……」

 悟と遊んでいて風が吹き、目を開けるとそこは大自然。更にこれでもかと言うほど色々な花が咲いていて少し不気味だった。

「ど、どうしよう……」

 とりあえず、人に会いたい。会うためには動かなければいけない。

「よ、よし……」

 覚悟を決めて森を彷徨いはじめる。



「あ、紅い……」

 数時間後、人には会えなかったが真っ赤なお屋敷を発見する。そして、門の近くに誰かが立っていた。

(やった! 人だ!)

 嬉しくなり、走ってその人に近づく。

「す~……す~……」

 その人は腕を組み、背中を壁に預けて眠っていた。服は緑のチャイナ服に緑色の帽子。髪は紅くて長いストレートだ。

「あ、あの~?」

「んごっ……は、はい?」

 声をかけたら目を覚ましてくれた。だが、僕の背が低すぎて気付いてもらえず、キョロキョロしている。

「こ、ここです……」

「すみません。えっと……?」

「キョウです。漢字はまだ習ってなくてわかりません……」

「『キョウ』さんですか? 上のお名前は?」

 いつもの慣れで苗字を言い忘れていた。

「あ、ごめんなさい! 僕の苗字は――」

 これが幻想郷での初めての出会いだった。

















「気を付けろ! あいつは『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』を持ってる!」

 響ちゃんの斬撃を躱しながら魔理沙さんが教えてくれる。

「な、何なんですか!? その物騒な能力!」

「それは私が!」

 いつの間にか文さんが私の隣に立っていた。

「物体の全てには『目』という最も緊張している点があり、フランドール・スカーレットはその点を右手に引き寄せる事が出来ます」

 文さんはぺらぺらと語りだす。その間に響ちゃんが1枚のスペルカードを左手で取り出した。

「そして――ドカーンです」

 そう言いながら、文さんが右手を握る。顔が引き攣ったのがわかった。響ちゃんは右手に持っていた炎の剣を魔理沙さんへ投擲する。

「いいか! 響の変身が変わるのは3~4分ぐらいだ! それまで耐えろ!」

 魔理沙さんは顔を背けて回避し、忠告して来る。

「……」

 響ちゃんが目を閉じて右手を前に突き出す。魔理沙さんは顔を歪め、文さんは『あややややや~!』と叫ぶ。

「も、もしかして!?」

「く、来るぞ! 全速力で移動! 私たちの『目』を引き寄せられないように!」

 魔理沙さんの指示通り、神社の上を飛び回る。



――パキーン



「きゃああああああああっ!?」

 何かが壊れる音がして悲鳴を上げてしまった。

「な、何が壊れた!?」

「目的は私たちではなかったようです! でも、見た所、壊れた物なんてどこにも……」

 文さんの言う通り、何も壊れていなかった。

「でも、音はしましたよ?」

「そうなんだよな」

「禁忌『フォーオブアカインド』」

 話し合っている途中で響ちゃんがスペルを発動。

「くっ!? 分身して来る!」

「ぶ、分身!?」

 魔理沙さんの言う通り、響ちゃんが4人に増えた。それぞれが私たちに向かって飛んで来る。

「とにかく! もう2分は経った! もうちょっとだから頑張って生き残れ!」

 そう言うと魔理沙さんは響ちゃんから距離を取るために高度を上げた。その後を響ちゃんが追って行く。

「じゃあ、私はこっちに行きますね?」

 文さんも響ちゃんを引き連れて移動する。

「い、行かなきゃ!」

 ここで戦ってしまうと神社を壊してしまうかもしれない。急いで離れようとしたが――。

「禁忌『カゴメカゴメ』」

「え!?」

 響ちゃんがスペルを発動し、弾幕で出来た檻に閉じ込められてしまう。

「逃がさないよ?」

「くっ……」

 仕方なく、私はスペルを構えた。



「……」

 上空で分身と戦っている早苗を見ているのは本物の響。しかし、意識はなくただ呆然と見ていた。

「――」

 その時、遠くの方で何かを感じ取ったのかその方向に顔を向ける。

(イッショニ、アソビマショ?)

 そんな声が聞こえた気がした。ここにいるより楽しそうだ。響はすこし口を緩ませ、声がした方へ飛び立った。その事に早苗は全く気付かないで分身と戦っていた。



















「それは困りましたね~」

「は、はい……」

 僕は美鈴さんに今までの事を話していた。

「むぅ~……少し待っててください!」

 そう言って美鈴さんはお屋敷の中に入ってしまった。

「うぅ~……」

 その途端に不安になる。美鈴さんの話によればここは僕がいた世界とは違うらしい。怖い。

「お待たせしました~! どうぞ、入ってください!」

 そう思っていると美鈴さんが帰って来る。更にこのお屋敷に入れて貰えるようだ。

「い、いいんですか?」

「はい! きちんと許可を取りました!」

 そう言いながら僕の手を握ってニコッと笑顔を見せてくる美鈴さん。それを見ていると先ほどまでの不安がどこかへ吹っ飛んでしまった。

「あ、ありがとうございます!」

「いえいえ! あ、忘れてました!」

「?」

「ようこそ! 幻想郷へ!」



















「ッ!?」

「? どうしましたか? お嬢様?」

 紅茶を入れている途中で急にレミリアお嬢様が肩をビクッと震わせた。

「……咲夜。戦う準備をしておきなさい」

「え?」

 意味がわからず、聞き返してしまった。

「でも、この狂気は? フランはここにいるし」

「ん? 私がどうしたの? お姉様?」

 お嬢様の呟きを聞いた妹様がケーキを食べながら首を傾げる。

「貴女は何も感じないの?」

 呆れながら妹様に問いかけるお嬢様。私の疑問は無視されてしまったようだ。

「感じるに決まってるでしょ~。私の狂気に反応してるみたいだね」

「きょ、狂気ですか?」

「うん。さっき、声が聞こえたもん。何だか懐かしい感じがしたよ?」

(懐かしい?)

「懐かしい?」

 お嬢様も分からなかったようで質問した。

「お姉様は覚えてる? あの子の事」

「……ええ。覚えているわ。あれほど衝撃的な事はないもの。でも、ありえないわ」

「そうなんだよ。ありえないから分からないんだよ」

「とにかく、咲夜は出来るだけ時間を稼いで。多分、強いから死なない程度に」

「は、はい……」

「じゃあ、私も準備して来るよ。とっても楽しそうだから♪」

 妹様は残りのケーキを一口で食べ、幸せそうな笑顔を見せた後、部屋に戻って行った。ただ、その笑顔の中には少しだけ狂気が混ざっていた。

「……」

「美鈴にも伝えて来て頂戴。中に入れないのが一番だから」

「かしこまりました。お嬢様」

 時間を止め、門まで移動する。門には腕を組んで険しい顔をしながら空を見ている美鈴がいた。

「? 珍しく起きているのね」

「……はい。何か来るのを感じたので」

「そう……なら、大丈夫そうね?」

「はい、善処します」

 私も美鈴が見ている曇り空を見る。雨が降りそうだった。



「……はぁ~」

 自分の部屋に戻ってから何度目かわからない溜息が漏れる。

(あの子……元気にしてるかな)

 昔に迷い込んで来た小さな子供の事を思い出す。あの頃はまだ地下にいたけどあの子は毎日遊びに来てくれた。

「だからあんな事になっちゃったんだよね……」

 もう一度、溜息を吐く。60年ほど前から始めた日記を開き、あの子の事を書いた所を読む。パラパラと――。

「まぁ、いいや。もう、あの子はここにいないんだし! 今は遊ぶ事だけを考えよ!」

 無理矢理、自分に言い聞かせて日記を放り投げて机の中に仕舞ってあるスペルカードを取り出した。

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 楼主| 发表于 2022-10-14 17:11:32 | 显示全部楼层
第27話 もう一人の――

前話からですが、過去の話と現在の話が混ざった文章構成となっております。ちょっと読みにくいかもしれませんが、時間が変わった時は間が通常よりも開けているのでそれで判断してください。

「きょ、キョウです」

「……そう。私はレミリア・スカーレット。この紅魔館の主よ」

 美鈴さんに案内されたのはレミリアさんの部屋だった。やはり、あいさつはしておいた方がいいとの事らしい。そのレミリアさんは僕の事をつまらなさそうに見ている。美鈴さんは門番の仕事でもうこの場にいない。不安だ。

「え、えっと……」

「美鈴から聞いている。災難だったわね。まぁ、この屋敷も馬鹿でかいから戻れる日まで好きなだけ使いなさい」

「あ、ありがとうございます」

 きちんとお辞儀してお礼を言う。

「……ねぇ? 貴方、何歳?」

「? 5歳ですけど……」

 いきなり質問されて戸惑いながら答える。

「へ~……5歳にしてはしっかりしてるのね?」

「まぁ、家が家ですから」

 僕は苦笑いしながら答える。両親は忙しくほとんど僕一人で生活しているのだ。料理も少し出来る。

「ふ~ん……じゃあ、部屋に案内するわ」

「はい!」

 頷いてレミリアさんの後について行く。



















「……」

 私は持っているスペルカードを確認して窓から空を見る。先ほどより曇って来た。お嬢様も準備があるらしく部屋に行ってしまい、多少不安を感じる。ここまで身構えるほどの敵が来るらしい。

「とにかく時間を稼ぐ」

 お嬢様に言われた事を復唱し、気合を入れる。

「――ッ!?」

 その時、いきなり外から威圧感に襲われた。

(こ、これが……)

 目を見開いて外を見る。黒い影が見えた。あれが敵。

「美鈴……」

 最初に戦う事になる美鈴が心配になるほどの威圧感。妖怪だから死にはしないだろうが大怪我は避けられないはずだ。

「……持ち場に」

 首を横に振って私は移動を開始した。



「これで終わりです!」

 私が放った弾幕が響ちゃんにヒットし、消滅した。どうやら、私が戦っていたのは分身だったらしい。

「や、やっと……ですか」

 地面まで降下しそのまま座り込んでしまう。かなり、力を消費してしまったのだ。

「お~い! 早苗! 大丈夫か~!」

 上から声が聞こえ、そちらを見ると魔理沙さんが飛んで来ていた。服は所々破れているが怪我はなさそうだ。

「は、はい……何とか」

「ん? 響はどこ行った?」

「え?」

 そう言えば、響ちゃんの姿がない。戦っている最中にどこかへ行ってしまったようだ。

「お二人さ~ん! お待たせしました~!」

 そこへ文さんが到着する。

「あや? あの方は?」

「それが……いなくなってしまったんです」

「そ、それはまずいですね~……あの姿で暴れて貰っては人里が滅亡してしまいますよ~」

 文さんがさらっと惨酷な事を呟いた。

「……なぁ? もう4分、経ったよな?」

 魔理沙さんが顔を青くしながら質問する。

「は、はい、経ってますけど……あれ?」

 時間切れを狙っていたはずだ。それなのに分身は最後まで消えていない。

「ん? これ、何でしょう?」

 疑問に思っていると文さんが何かを見つける。

「これは……スペルカードだな。えっと、永遠『リピートソング』? お前らのじゃないよな?」

 魔理沙さんに聞かれて首を横に振る。文さんも同じようにしていた。

「リピートソングって事は……繰り返す曲? 同じ曲を聞き続けるって事ですかね?」

 簡単な英語だったので推測出来た。私の言葉を聞いた魔理沙さんが目を見開く。

「……まずい。まずいぞ! このスペル、響のだ!」

「響ちゃんの?」

「ああ、あいつの能力の事なんだが――」

 魔理沙さんは響ちゃんの能力について教えてくれた。

「じゃ、じゃあこれは?」

「多分、フランの曲を聞き続けてる」

「でも、待ってください! このスペルって弾幕ごっこで使っていいものなのでしょうか?」

「どういう事ですか?」

 文さんの言っている意味が分からず、聞き返す。

「このスペルって卑怯ですよね? 相手に有利な姿になった時に発動すればもう勝つに決まっています。だから、これは仕事用じゃないかと」

「仕事用?」

「はい。魔理沙さんと早苗さんの話によれば響さんという方はこの幻想郷の住人の姿になって万屋の仕事をしている可能性があります。ですが、時間制限がありますよね? もし、その時間制限を超える仕事だったら? 同じスペルを何回も唱えなければいけません。それだけでもかなりの時間ロスです。だから、こういったスペルを作ったのではないでしょうか?」

「じゃあ、どうやってこのスペルを? 仕事用だったら使えないよな?」

「っ!? も、もしかして! さっき壊したのって!」

 私は恐ろしい事に気が付いて声を荒げる。

「そ、そうか! あいつ、フランの能力でこのスペルの制限を壊しやがった!」

 悔しそうに魔理沙さんが右手を握る。

「追いかけましょう!」

「ああ! 見つけたらここに集合な!」

「待ってください!」

 飛び立とうとした私たちを止める文さん。

「魔理沙さん、八卦炉なしで本体に勝てますか?」

「ぐっ……」

 痛い所を突かれて魔理沙さんが顔を引きつらせる。

「早苗さんも肩で息してるじゃないですか」

「うっ……」

「それにここに戻って来たって向こうも移動しているはずです。すぐに見失ってしまいます。まだ、3人固まっていた方が安全です。それとあの方に協力を依頼するのはどうでしょうか? もうこれは異変です」

「あー……それは私も考えた……んだが」

 頬を掻きながら魔理沙さんが気まずそうにしていた。

「? どうしました?」

「じ、実はな――」







「う、うぅ……」

 目の前がくらくらする。俺は一体、どうしてしまったのだろう。何となく面倒な事になっているような気がする。

「あ、気付いた?」

「……え?」

 体を起こしていると聞き覚えのない声が上からした。声からして女。

「ほら、立って」

 その女に腕を掴まれ、無理矢理立たされる。

「さんきゅ……っ!?」

 お礼を言いながら顔を上げるとそこに――。

「じゃあ、状況を説明するわね」



 俺がいた。



「ま、待て! お前は何者だ!?」

 顔つき、髪型が全く同じなのだ。違うのは声質と背丈と体つきぐらい。声は俺よりも高めで背丈は俺の肩ぐらいまでしかなかった。体は丸みを帯びていて胸も膨らんでいる。望よりあるようだ。まるで――。

「『俺が女だったらこんな姿をしてる』って思った?」

「っ!?」

 俺の考えている事が見透かされている。

「まぁ、そう思うのも無理ないわ。でも、これを見たらどうかしら?」

 女はそう言って、背中をこちらに向ける。

「つ、翼?」

 女の背中に漆黒の翼が生えていた。いや、違う。枯れ木のような筋があって全てが黒と言うわけではなかった。

「ええ、翼よ」

 俺の方に向き直りながら女が言う。どうやら、こいつは人間ではないらしい。

「で、今の状況だけど」

「だから! お前の正体を教えろって言ってんだよ!」

「私? 私は貴方。貴方は私よ? で、状況なんだけど」

 諦めて女の話を聞く事にした。

「ぼ、暴走?」

「ええ、貴方は狂気に取り込まれてる」

「……早苗は?」

 一番、近くにいた早苗の事が心配になる。

「大丈夫みたいよ? 今は分からないけど」

(今は?)

 疑問に思ったが無視する事にした。

「俺は? 俺には何が出来る?」

「……あるにはあるけど無謀よ?」

「何かあるのか!?」

「まず、ここの事を説明するわね」

 女に言われて初めて俺はこの空間を観察する。地面は血のような赤い液体でびちゃびちゃだ。そこに寝ていたのにも関わらず服が濡れていないのはどうしてだろう。空は夜空。いや、空ではない。ドーム状になっているようだ。

「この空間は貴方の魂の中なの」

「魂?」

「そう。で、貴方が暴走したきっかけは狂気との魂逆転」

「へ?」

「貴方の魂は特別でいくつかに分かれているの。そして、元々の魂を10とすると貴方の魂は8あった。で、狂気は1だったの。比率的に貴方の魂の方が多いわ。だから、貴方がこの体の所有権を握っていた。でも、あの変身が原因で狂気と貴方の魂の位置が逆転。狂気が8。貴方は1ってわけ」

「じゃあ、ここは?」

「狂気がいた空間よ」

 色々、疑問があるが無視して一番、気になる事を聞く。

「お前は? どうしてここにいる?」

「私のいた空間も狂気に乗っ取られたのよ。これで8対2。魂逆転の直前だったからこっちが広くなったみたい。全く、どうして安心して寝かせてくれないのかしら?」

「ご、ごめんなさい……」

 思わず、謝ってしまった。

「……まぁ、いいわ。で、貴方に出来る事。それはこの空間を破壊する事よ」

 どうやら、本当に面倒な事が起きているようだった。

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 楼主| 发表于 2022-10-14 17:40:20 | 显示全部楼层
第28話 出会いと衝突

「あ、あれ?」

 紅魔館にお世話になってから2週間が経った。このお屋敷は見た目通り、広い。案の定、道に迷ってしまった。今、何階なのかも分からなくなってしまった。

「ど、どうしよう……」

 今までは誰かと一緒にいたので何とかなった。でも、今は一人。

「適当に歩くしか……」

 僕はビクビクしながら歩き始めた。



「? ここって?」

 階段を下りると部屋があった。この前、案内してくれたレミリアさんは紹介してなかったと思う。よく見ると鍵がかかっていた。

「だ、誰かいるかな?」

 おそるおそるドアをノックする。

「――?」

 中から誰かの声がした。

(やった! 人がいる!)

「あ、あの! 僕は『キョウ』って言います! 2週間ほど前からお世話になってます!」

「わ……フ……レ……」

 中の人がドアに近づいて来てくれたのか先ほどより聞き取りやすくなった。

「す、すみません! もう一度、言ってくれませんか? ドア越しなので聞き取りづらくて」

「いいよ。私はフランドール・スカーレット。よろしくね? キョウ」

 女の子の声が聞こえて嬉しくなった。

「は、はい! よろしくお願いします!」

 これがフランさんとの出会い。この後、あんな事が起きるなんてレミリアさん以外知らなかった。いや、レミリアさんも知らなかった。運命では全く起きるはずない事だったのだから。







「……来ましたか」

 曇天の空の下。黒い影が高速でこちらに近づいて来る。門に背中を預けるのをやめて拳を握る。

「さて、どれくらい耐えられるのやら……」

 腰を低くし一気に跳躍。目指すはあの黒い影。

(一撃で決める!)

 体の中にある全ての気を握りしめた右手に込める。

「秘弾『そして誰もいなくなるか?』」

「ッ!?」

 敵がスペルを発動し、消えた。私の渾身の一撃は空を切る。

「い、今のスペルはフラン様のっ!?」

 驚いた瞬間、周りに大量の弾が私を狙う。

「しまっ――」

 どうする事も出来ずに被弾し、気を失ってしまった。



「……」

 響は美鈴が落ちていくのを黙って見ていた。

(早く……おいでよ)

「――」

 声に急かされ響は紅魔館の窓を叩き割り、そこから内部へ進入する。



「ほ、本当ですか?」

「あ、ああ……どうもそうらしい。紫も驚いていたほどだ」

「あやや~! これは記事になりそうですね~!」

「その新聞をばら撒いた瞬間、お前は光を失うと思うぞ? あ、時間は永遠な」

 魔理沙さんの忠告に震える文さん。あの人ならやりそうだ。

「で、どうします?」

「う~ん……やっぱり、協力してもらうか」

「はい、見てみたいですし」「そうですね。見てみたいですし」

 決まれば早い。私たちは移動を始めた。







「外の世界って面白そう」

「そうかな~?」

 フランドールさんと出会って3日、経った。僕は毎日ここに遊びに来ている。ドアが邪魔して顔は見えないけどおしゃべりぐらいなら出来る。

「で? 今日の本は何?」

「今日はね~! 吸血鬼と人間の恋の物語!」

「……吸血鬼、ね」

「うん! パチュリーさんがおすすめしてくれたの!」

 フランドールさんは本をほとんど読んだ事がないらしくこうやって読み聞かせしているのだ。だが、この本は分厚くて1日じゃ読み終わりそうにない。

「まぁ、いいよ。面白そうだから」

「じゃあ、読むね!」

 僕はドアに背中を預け、本を読み始めた。







 窓が割れる音がし、時間を止めて現場まで移動。そこには丁度、窓から中に入ろうとしている敵がいた。

(服が妹様に似ている? いや、まるっきり同じだわ。羽も。髪は違うけど……一体、どういう事なの?)

「そこまでよ」

 疑問を残しつつ、時間を戻して敵に言う。

「――」

 敵は廊下に降り立ってゆっくり、こちらに目を向ける。

「ここで貴女を倒すわ」

 ナイフを構え、投げる。敵はそれを軽く躱し、私に向かって突進して来る。

「幻世『ザ・ワールド』!」

 スペルを発動し、時間を止めた。その間にナイフを設置。

「そして、時は動き出す」

 私の言葉に反応して時間が動きだし、ナイフが敵を襲う。

「禁忌『恋の迷路』」

 だが、敵がスペルを発動する。敵を中心にして波状弾幕が放たれる。ナイフは弾幕に吹き飛ばされ、廊下に散らばる。

(こ、これは妹様の!?)

「禁弾『スターボウブレイク』」

「くっ!?」

 敵がまたもや妹様のスペルを唱え、七色の矢を放つ。体を捻って躱すも躱し切れず、左足に掠ってしまった。

「――ッ」

 その掠った箇所から血が噴き出る。弾幕ごっこではありえない事だった。つまり、これは弾幕ごっこではない。

(本当に殺しに!?)

 次々に矢が放たれる。逃げようとするが足に激痛が走る。このままでは殺されてしまう。

「紅符『スカーレットシュート』」

 その時、後ろから紅い弾幕が飛んで来て七色の矢を相殺する。

「お、お嬢様?」

「お疲れ様、咲夜。治療して来なさい。出血多量で死ぬわよ」

「は、はい」

「それにしても……予想外ね。まさか、フランのスペルを使えるなんて……」

 口ではそう言っているが少し口元が緩んでいる。

「まぁ、いいわ。さぁ、かかってらっしゃい」

 お嬢様の挑発に敵は矢を放って答えた。



「こ、壊すって……どうやって?」

「それは自分で考えて欲しいわ。私も分からないんだから」

「無責任な……」

「貴方の魂でしょ? 自分で何とかしなさい」

 女はそう言うと飛び立った。

「ハッ!」

 天井までたどり着いた女は右腕を引いて思いっきり突き出した。どうやら、殴って壊すらしい。

「俺の魂?」

 その様子を見ていて先ほどの女の言葉を思い出す。ここは俺の魂の中だ。

(……よし)

 目を閉じる。イメージするのだ。そうすれば、きっと――。

「……来た」

 左腕にホルスターが取り付けられていた。ここは現実世界ではない。ならば、これぐらいの事は出来る。そう思って試したら成功した。イヤホンを伸ばし、耳に装着。曲を再生。

「ここからだ! 絶対、壊してやる!」

 スペルが出現し、宣言する。

「U.N.オーエンは彼女なのか?『フランドール・スカーレット』!」



「――って事なんだよ」

 場所は博麗神社。そこで魔理沙さんが霊夢さんに事情を説明している。文さんは響ちゃんの行方を聞き込みしているのでここにはいない。

「……わかったわ。行きましょう」

 縁側に湯呑を置いて、霊夢さんが立ち上がった。

「ほ、本当ですか?」

「ええ、聞くだけでもかなりやばい状況だわ。それに響が心配よ」

「「……」」

(あの霊夢さんが人の心配を……)

 驚いて魔理沙さんと顔を見合わせる。

「皆さ~ん! 響さんの居場所がわかりました!」

 丁度、文さんが帰って来た。

「どこなんだ?」

「はい、どうやら紅魔館に向かったようです」

「紅魔館? どうしてそんな所……ま、まさか?」

 魔理沙さんが後ずさる。何かわかったようだ。

「……紅魔館にいるフランの狂気に誘われたようね」

 魔理沙さんの代わりに霊夢さんが言った。

「え? 狂気に?」

「響はフランに変身しているのでしょ? なら、フランの狂気だって響の中にいるはず。もしかしたら、引かれ合うのかも」

「フランと戦えばどうなるのかわかったもんじゃない!」

 魔理沙さんが箒に跨りながら呟く。

「急ぎましょ? このままでは紅魔館が全壊するわ」

 冷静に見えた霊夢さんの目には不安と心配が見受けられた。何やら、とんでもない事になっている事がわかる。

「あ、その前にいいですか?」

 文さんが霊夢さんを止めた。

「ん? 何?」

「この異変の名前でも決めておきませんか?」

「おいおい! こんな時に決めなくても……」

 魔理沙さんが文句を言うが文さんはそれを無視した。

「そうね……『狂気異変』とでも言っておきましょうか」

「うわ……聞くだけでやばい感じがします」

 顔を引きつらせて感想を漏らす私。

「まぁ、そういう状況だって事は言っておくわ」

 それだけ言って霊夢さんは紅魔館を目指して飛び立った。それに続いて私たちも出発する。だが、霊夢さんはまだ言っていない事があった。それを知るのはずっと後の事になる。

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 楼主| 发表于 2022-10-14 17:50:00 | 显示全部楼层
第29話 破壊

「――おしまい」

「……せつないね」

 ドアの向こうで涙声のフランさんが感想を漏らす。

「うん。結局、結ばれなかった……」

 僕も涙を流している。それほど感動的な話だったのだ。

「最後の所が良かったと思うよ。女の吸血鬼が死ぬ寸前の人間の男に自分の血を飲ませようとしたところ。同じ吸血鬼になれば長生きできるもの」

「でも、男は断っちゃうんだよね。人間のまま、死なせてくれって……」

 この物語を読み終えるのに1週間かかった。僕がここに来てから約3週間が過ぎる。元の世界に帰る方法を探しているのだが、一向に見つからない。

「本当に人間に吸血鬼の血を飲ませたら飲んだ人間も吸血鬼になるのかな?」

「さぁ~? どうなんだろうね?」

 この1週間で変わった事と言えば、フランさんを『フランさん』と呼ぶようになったのと僕の口調がタメ口なった事ぐらいだ。フランさんからお願いされたのだ。

「明日は新しい本、持って来るね」

「ええ、よろしく」

 立ち上がって僕は階段を上り始めた。どのような本を持って行くか考えながら――。



















「神槍『スピア・ザ・グングニル』!」「禁忌『レーヴァテイン』」

 レミリアは紅い槍を、響は炎の剣をそれぞれの右手に持つ。

「うおおおおおおっ!!」「……」

 レミリアが咆哮しながら槍を投げ、響はそれに剣を下から当てて軌道を逸らす。逸らされた槍は、紅魔館の天井を突き破り、外に飛び出した。

「天罰『スターオブダビデ』!」

 響が槍の行方を見ている内にレミリアがスペルを発動。レーザーと大玉が響を襲う。レーザーは自分の反射神経を頼りに躱し、大玉は剣でぶった切る。

「くっ!?」

「……」

 響はそのまま弾幕の中を疾走し、レミリアの懐に潜り込む。その顔は無表情。

「『レッドマジック』!」

 剣がレミリアの腹に届くまであと数歩と言うところでスペルを唱えた。

「……」

 だが、響は無闇に突っ込まずバックステップして距離を置く。

「……」

 その様子を見てレミリアが目を細める。狂気に取り込まれているのにどうしてこのような戦い方をするのだろう。そう思っているのだ。

 狂気に取り込まれてしまうと理性を失くし、本能のままに破壊活動を行う。それなのに響は慎重に戦っている。

「呪詛『ブラド・ツェペシュの呪い』!」「禁忌『クランベリートラップ』」

 そんな疑問に答えられる人もいない。だから、レミリアは攻め続ける。響もそれに答えるように戦い続ける。これは弾幕ごっこではない。ただの殺し合いなのだから。



「ここまで余波が来るなんて……もはや、弾幕ごっこではないみたいね」

「ああ、レミリアの槍が飛んで行ったのも見えたし」

 霊夢、魔理沙、早苗、文の4人は紅魔館に移動している途中だ。先ほどレミリアの神槍が紅魔館から飛び出すのを確認した。

「ん? あれって……」

 魔理沙が何かを発見し、下降する。

「っ!? 中国じゃないか!」

 そこにはボロボロになったまま気絶している美鈴の姿があった。

「くっ……し、白黒?」

「だ、大丈夫か!?」

 美鈴の体を起こしながら質問する魔理沙。

「は、はい……何とか。そ、それよりも今日は帰った方がいいですよ? 化け物が来てますから」

「その化け物を止めに行くんだよ」

「――ッ!? し、死にますよ!?」

 美鈴は魔理沙の言葉に目を見開く。

「何とかなるって! ほら、これだけの仲間がいるんだから」

「……うわ。敵に回したくない人ばかりじゃないですか」

 上で魔理沙の事を待っている3人を見て苦笑いする美鈴。

「まぁ、見てろって。じゃあ、行って来る。一緒に来るか?」

「行きたいんですが……もう少し休んでいきます」

「そうか。じゃあ、止めて来る」

 魔理沙はそう言って箒に跨り、上昇し始めた。それを美鈴は黙って見ている。いつもは敵同士だったのに――。いや、敵同士だったからこそ美鈴は魔理沙が本当にあの化け物を止められると思った。





















「貴方……フランの所に行ってるみたいね?」

「ご、ごめんなさい。今まで黙ってて」

 本を持ってフランさんの所に行こうとしたらレミリアさんに捕まってしまった。

「……もう行くのはやめなさい」

「え?」

「あの子は危険なの。貴方なんか一瞬で壊される」

「で、でも……」

「やめなさい」

「っ!?」

 レミリアさんの紅い目が僕を硬直させる。これが吸血鬼。足が震えて動けなくなってしまう。逆らったら殺される。本能で理解した。

 こうして、僕はフランさんの所へ行けなくなってしまった。







「……どうして、来ないの?」

 最近、遊びに来てくれていた男の子がいつまで経っても来ない。

「まぁ、毎日来る方がおかしいか……」

 そう、自分に言い聞かせてベッドに潜った。







「……」

 男の子が来なくなってから3日、経った。寂しい。私はあの子に助けられていたんだと理解した。この寂しさを紛らわす為にベッドに潜った。









「どうして……こないの?」

 1週間。時間の感覚がなくなって来た。あの子が来てから書き始めた日記は机の上に放置したままだ。書かなくちゃ。いや、やめよう。面倒くさいからベッドに潜った。









「ドうシテ、コナイの? どウシて、コなイノ? ドうしテ、こナイノ? ドウシて、コ――」

 1か月経った。私は言葉に出しながら日記を書く。今日の分だけで4冊書いた。潜る為のベッドはもうない。消滅させてしまった。これからどうすればいいのだろう。

――パキ……

 手に持っていた羽ペンが折れる。

「……そウダ。コこかラデよウ」

 日記を投げ捨てて私は固く閉ざされたドアを睨む。そして、右手に集める。

「どカーん……」

 ニヤリと笑いながら右手を握り、ドアを粉砕。凄まじい轟音と砂埃。それを無視して開いた穴から外の世界に飛び出す。この後に起きる事なんて知らずに――。





















「おい……女」

「何よ。今、いそが……あら? その姿は?」

 紅いスカート。枯れ木のような羽に七色の結晶がくっついたような羽。ドアノブのような帽子。右手に黒い杖のような物。目は紅く、犬歯は伸びて少し口から出る。八重歯というものだ。そんな姿をした響が天井を殴り続けていた女に声をかける。

「ここは俺の魂、何だろ? PSPぐらい召喚出来そうだったから試した」

「それで……成功みたいね。じゃあ、一緒に壊しましょ?」

「……に、しても頑丈だな」

 女が殴り続けていたのに傷1つ、付いていない。

「ええ、私の手が壊れてしまいそうだわ」

 見ると女の手から血が流れている。皮でも破れたのだろう。

「ああ、後。そのコスプレよ」

「あ? 何が?」

「貴方が暴走するきっかけになったの」

「え!? マジで!?」

 響は驚いて目を見開く。羽もパタパタと忙しなく動いている。

「まぁ、大丈夫でしょう。貴方の狂気はもう表に出ているのだから」

 その姿がかわいらしくて女が頬を緩ませながら言う。

「そ、そうか? じゃあ、心置きなく。禁忌『フォーオブアカインド』!」

 スペルを発動し、4人に分身する響。

「おお! すげ~!」「これなら壊せそうだな!」「ああ、いけそうだ!」「ほら、新しいスペルを持て!」

 少し会話してからそれぞれがスペルを手に持ち、宣言。

「禁忌『レーヴァテイン』!」「禁弾『スターボウブレイク』!」「禁忌『クランベリートラップ』!」「禁弾『過去を刻む時計』!」

 それぞれから放たれた弾幕が空間の天井に激突する。
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 楼主| 发表于 2022-10-14 18:02:06 | 显示全部楼层
第30話 全ての始まり

グロ注意です

「な、何!? 今の!?」

「わ、わかりません!」

 僕が図書館で魔導書を読んでいたらすごい音がした。パチュリーさんも小悪魔さんも慌てている。

「も、もしかして! 小悪魔! レミィの所に確認しに行ってきて!」

「は、はい!」

 パチュリーさんの指示通り、小悪魔さんが図書館から飛び出した。

「あ、あの? 何が、起きてるんですか?」

「……レミィの妹のフランは知っているわね?」

「はい」

「多分、脱走したのよ。貴方を探しに」

「ぼ、僕ですか!?」

 驚いて本を落とす。

「そうよ。そうとしか考えられない。逃げなさい!」

「え?」

 意味が分からなかった。僕を探しに来ているのなら会えばいいだけの事ではないのだろうか。

「きっと、殺されるわ!」

「こ、殺される?」

 パチュリーさんが口を開こうとした時、図書館のドアが吹き飛ぶ。

「う、うわっ!?」

 暴風に煽られ、僕は椅子から転げ落ちる。

「き、来た! 早く、逃げなさい! 私が時間を稼ぐから!」

 パチュリーさんが魔導書を開きながら叫ぶ。

「ニガさナイよ?」

 ドアの方からフランさんの声がした。

「っ!?」

 紅いスカート。枯れ木に七色の結晶がくっついたような羽。フリルが付いた帽子。目は紅く、犬歯は伸びて少し口から出ている。だが、目が虚ろで口元はニタニタと笑っていた。

「ふ、フランさん?」

「そノコえ……キょウ?」

 どうやら、転げ落ちた事によって床に座っている状態の僕を机が陰になってフランさんから見えていないらしい。こちらを見ずに呟いていた。そして、膝を折って姿勢を低くし目で僕を捉える。

「みーツけタ……」

「ッ!?」

 そのセリフを聞いた瞬間、背中にゾクッと悪寒が走った。レミリアさんとはまた、違う悪寒。幼稚な頭でも理解出来た。殺気だ。

「早く!」

「は、はい!」

 パチュリーさんに急かされ、慌てて立ち上がる。

「ニがさナイってバ」

「貴女の相手は私よ!」

 そう言うとパチュリーさんの頭上に巨大な炎の弾が出現。

「……」

 炎の弾を飛ばす前にフランさんは右手を前に突き出し、ギュッと握った。ただそれだけで――。

「きゃあっ!?」

 炎の弾が破裂しパチュリーさんを吹き飛ばし、残骸が図書館に降り注ぐ。

「ぱ、パチュリーさん!?」

 地面に倒れたままのパチュリーさんに向けて叫ぶ。しかし、返事がない。どうやら、気を失っているようだ。

「つかマえタ♪」

 その隙にフランさんが僕の右腕を掴む。

「う、うあああああああああああああああああっ!?」

 だが、あまりにも握力が強すぎて腕が潰れた。骨は砕け、血が勢いよく噴き出す。あまりの痛みに絶叫し、気絶しそうになる。しかし、痛みで気絶出来なかった。

「あ、あぐッ……」

 上手く呼吸が出来ない。意志に反して涙が零れる。足に力が入らず、膝から崩れ落ちた。

「ン? ドうしタノ?」

 ニタニタと笑いながらフランさんが僕の顔を覗き見る。

「ナイてるノ?」

「ぅ、あ……」

 声を出そうとしたが掠れた。

「ワたシニ、あいタクナかッタ?」

 声が出ないので首を横に振った。だが、フランさんはその仕草を見ていなかったようで眉間にしわを寄せる。

「どうシテッ! ドウして、きテクれなカッタ!?」

 ボロボロの僕の右腕を握る力が強くなった。

「ぐ、ぐあああああああああっ!?」

 千切れた皮膚の合間から中の肉が顔を出す。目の前が霞んで来た。

「ナにも、イワなイんダ……じャア、こワれチャえ」



「こっちです!」

 小悪魔の案内で図書館に駆け込む。

(こんな運命、知らないわ!)

 2か月前ぐらいにフランが部屋を脱出する運命を見た。その運命では私の所に来て攻撃して来るはずだった。だが、フランは図書館にいるらしい。どういう事なのかさっぱりわからない。

(もしかして……彼の仕業?)

 実はキョウがこの紅魔館に来る運命なんてなかった。私はそれを深く考えずに流した。偶にはこういう事もあると思っての事だ。

「何が起きてるって言うの?」

イライラしながら壊れた図書館のドアを潜る。

「ぱ、パチュリー様!」

 図書館に入ってまず、地面に伏したパチェを見つけた。小悪魔は慌てて駆け寄る。

「……どう?」

「き、気絶しているようですが外傷はないようです」

「そう、よかっ……っ!?」

 小悪魔の言葉に安堵の溜息を吐いた刹那、驚愕し目を見開いた。

「壊れちゃった……壊れちゃったああああああ!?」

 わんわん泣くフランと血だらけで床に転がる瀕死のキョウがいた。フランの頬にはキョウの血と思われる赤い液体が付着している。返り血だ。

「ふ、フラン?」

 信じられないのはフランが泣いている事。狂気に飲み込まれていたのなら、今頃キョウを消滅させていてもおかしくない。それなのに瀕死とは言え、息をしている。

「お、お姉様……どうしよう。どうしよう!!」

 私に気付いたフランはポロポロと涙を流しながら抱き着いてきた。

「キョウが……キョウが……」

「落ち着きなさい」

 フランを抱えながらキョウの様子を伺う。右腕は潰れ、左足は足首から下がなくなっていて右足は膝からあり得ない方向へ曲がっている。更に腹からどくどくと血が噴き出していた。フランの右腕が血だらけなので、貫通させたらしい。目は虚ろで口からも血が流れている。どんどん血の海が広がって行く。傷からしても流れた血の量からしても、もう助からない。

「フラン? もう、キョウは――」

「そ、そうだ!」

 それを告げようとした矢先、私から離れてキョウの傍に座るフラン。

「何を――」

「くっ……」

 意味が分からず、質問しようとしたがその前にフランが自分の人差し指を噛み千切る。指から溢れ出た血がキョウの血と混ざった。

「な、何やってるのっ!?」

「血を……血を飲ませるの!」

 キョウの口を無理やり開けながらフランが叫ぶ。

「血?」

「うん! キョウが最後に読んでくれた物語で女の吸血鬼が瀕死の人間の男に血を飲ませて助けようとしてた!」

 血がだらだらと流れている人差し指をキョウの口へ突っ込む為に右手を構える。

「ま、待ちなさい!」

 それをフランの右手首を掴んで阻止した。

「は、離して! 早くしないとキョウが!」

「その話、私の事なの!」

「……え?」

 抵抗する事をやめ、こちらを見るフラン。

「私が……パチェに頼んだの。もしかしたら、フランが人間に恋するかもしれないから私の過去を物語にしてくれって……あの、苦しみを味わって欲しくないから」

 しばらく、沈黙。

「そ、そうよ……」

 その沈黙を破ったのはパチェだった。小悪魔に支えながら苦しそうに胸を押さえている。喘息の発作が起きているのかもしれない。

「丁度、私とレミィが出会った頃の事よ。レミィは人間の男に恋をしていた。でも、吸血鬼と人間。寿命が違いすぎる。それをわかってもらう為に私はあの子にレミィの物語をおすすめしたの」

 パチェがキョウを横目で盗み見て小悪魔に手伝ってもらいながら近づき、治癒魔法をかけ始めた。時間を稼ぐつもりなのだ。きちんとフランが理解する時間を――。

「こ、恋?」

 フランが首を傾げながら私に質問する。

「貴女自身では気付いてないでしょうけど……キョウに会えなくて寂しかった?」

「……うん」

「辛かった?」

「うん」

「話したかった?」

「うん!」

「キョウの顔を見てみたかった?」

「うん!!」

「それが恋よ」

「これが……恋」

 胸に手を当てて呟く。幽閉されながらも心は成長していた。そろそろあの部屋から出してもいいかもしれない。

「じゃあ、なおさら!」

 再び、フランがキョウの口へ人差し指を突っ込もうとする。

「貴女は忘れたの? あの物語の最後」

「っ!?」

 私がそう言うとフランの指が急に震えだす。

「吸血鬼にされた彼の事はどうでもいいの? 彼は元々、外の世界の人。それもまだ5歳。吸血鬼になった彼は絶対に外の世界に帰れない。外の世界で待っている家族に永遠の別れを告げさせるつもり? 一生、お日様の下に出られない体にするつもり?」

「……」

 フランは左手で震える右手を押さえるも震えは止まらない。

「私の時は……本人が拒否したから出来なかった。でも、貴女が恋した相手は死ぬ寸前で答えられない。だから、貴女が決めるの」

「わ、私が……」

「パチェ、後どれくらい持つ?」

「5分も持たないわ」

「ッ!?」

 パチェの言葉にフランが体を震わせる。

「もう時間がないわ。早く決めなさい」

 これは試練なのだ。フランがあの部屋から出られるかどうかの試練。キョウには悪いけどこれもフランの為なのだ。

「う、うわあああああああああ!!」

 フランは絶叫しながら自分なりの答えを表す行動を取った。
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 楼主| 发表于 2022-10-14 18:06:39 | 显示全部楼层
第31話 破壊を破壊する破壊

「はぁ……はぁ……」

「……」

 私が現場に辿り着いた頃にはお姉様は跪いていた。そして、私と同じ服を着た敵が炎の剣をお姉様に向けている。

(あのお姉様が負けた?)

「禁忌『レーヴァテイン』!」

 急いでスペルを発動し、炎の剣を片手に敵に突っ込む。

「――」

 こちらをちらっと見た敵はほんの少し口を綻ばせる。それからバックステップして距離を取った。

「ふ、フラン?」

「ゴメンね。遅くなっちゃった」

 お姉様の前に立ち、敵と対峙する。自然と目が合い、感じた事を素直に呟いた。

「お前は私だ」「私はお前だ」

 私にはわかる。敵の中の狂気は私と同じ。

「どうしてその体の中に?」

「答える必要性はない。戦え」

「どうして?」

「お前と戦ってみたい」

「……そう」

 私は剣を構えて、答えた。懐かしい感覚だ。何かを壊したくなったのだ。

「本気で行くよ?」「本気で行くぞ?」

 自分自身との戦い。これで2度目だ。私と敵は同時に床を蹴った。



「こっちよ!」

 霊夢さんの案内で紅魔館をものすごいスピードで飛ぶ。

「本当に便利だよな」

「そうですね」

 魔理沙さんの呟きに頷く。霊夢さんの勘は当たる。

「! いたわ!」

 その声に反応して前を向く。そこにはフランさんと戦っている響ちゃんの姿があった。

「す、すごい衝撃波ね……これ以上、近づけないわ」

 霊夢さんの言う通りでこれ以上、近づけない。仕方なく、その場に着地した。

「あやややや~! あのフランドール・スカーレットと互角に戦うとは……」

 文さんは写真を取りながら感想を漏らす。

「おい! レミリア!」

 その時、急に魔理沙さんが走り出した。

「ん? あら? 来たの?」

 廊下に座ったままレミリアさんが振り返ってこちらを見た。所々、血が流れている。

「だ、大丈夫なのか?」

「ええ、これぐらい。フランと遊ぶ時よりはましよ」

(どんな遊びですか……)

 声に出さずにツッコむ。

「それより、あれについて知ってる?」

 レミリアさんは響ちゃんを指さしながら質問して来た。

「あれは音無 響。万屋だ」

 魔理沙さんが答える。

「響……いや、あり得ないか。苗字も違うし」

「ん? どうかしましたか?」

 声が小さくてよく聞こえなかったが何か呟いたレミリアさん。

「何でもない。それより、何なのあれ? どうしてフランの姿を?」

「それは私から説明するわ」

 霊夢さんが簡単に響ちゃんの能力の説明をする。

「変な能力ね。それにフランになって暴走って……」

「あいつ、お前の姿にもなってたぞ?」

 魔理沙さんが箒を廊下の壁に立てかけながら言う。

「え!? 本当!?」

「ああ、その時、丁度昼間で外にいたから……な?」

「……」

 それを聞いたレミリアさんは震えだす。想像してしまったのだろう。

「あの耳に付けてる紐を引っこ抜いたら変身が解けたから大事には至らなかったけどな」

「そう、あれはもう経験したくないわ。じゃあ、あの紐を抜けば暴走は止まるのね?」

「ええ、近づけられたらね? でも、無理よ」

 霊夢さんは一度、頷くがすぐに否定した。

「レミリアなら行けるんじゃないか? わたしたちより体は丈夫だろ?」

「バカ言ってんじゃないわよ。よく見なさい」

「ん?」

 フランさんと響ちゃんはお互いに炎の剣を左手に持ってぶつけ合っている。だが、右手は先ほどから握ったり広げたりを繰り返していた。

「も、もしかして……」

 フランさんの能力を聞いていたので恐ろしい事に気付く。

「そう、あの子たち能力も使ってるの。お互いに能力で能力を打ち消し合って壊されないようにしてる」

 つまり、フランさんが右手を握って能力を発動し、響ちゃんを破壊しようとする。それを響ちゃんが右手を握って能力を破壊。逆に響ちゃんが右手を握ればフランさんが防ぐ。

「あの中に入って行ったら私の体が壊れるどころか消滅してなくなるわ」

「じゃ、じゃあどうすれば……」

「黙って見ているしかない」

 魔理沙さんは最初から気付いていたようで床に座って胡坐を掻く。

「ほら、女の子は胡坐を掻くもんじゃないわよ」

 霊夢さんも正座する。文さんは写真を取る為に移動していたので座る気はないらしい。

「早苗も座れよ」

「は、はい……」

 魔理沙さんに促されてその場に安座した。



 ――少し、時間は遡る。



「ぱ、パチュリー様……この振動は?」

「敵が来たって事ね」

 読んでいた本を閉じて立ち上がる。

「行きますか?」

「ええ、役には立てないと思うけど一応ね」

「し、失礼します……」

 図書館から出ようとしていたところに咲夜がやって来る。

「どうしたの……ってその足」

 咲夜の左足から少なくない血が流れている。どうやら、皮膚だけではなく血管も傷ついているようだ。

「はい、やられてしまいました。今、お嬢様が戦っている最中です」

「そうなの……椅子を」

「は、はい!」

 私の指示で小悪魔が椅子を咲夜の元へ持って行き、咲夜はそれに座った。

「よくここまでたどり着けたわね。その足で」

「飛んで来ましたので……後で、垂らした血をお掃除しないといけませんね」

 血を流し過ぎて貧血を起こしているらしい。咲夜はふらふらだった。

「でも、どうしてここに?」

「すみません。この傷は一人じゃどうする事も……」

「まぁ、確かに。包帯」

「はい、どうぞ」

 小悪魔から包帯を受け取って咲夜の足に手を翳す。体の中にある魔力を手に集める。治癒魔法だ。

「少し染みるけど我慢ね。それに血を止めるだけしか出来ないから傷が完治するまで痛むと思うから」

「はい、わかりま――っ!?」

 言葉の途中で咲夜が目をきつく閉じた。それほど染みるらしい。

「ぱ、パチュリー様……」

「何?」

「傷に指が……」

「あら」



「――こんな感じです」

 手当している間、咲夜に先ほどよりも詳しく今の状況を聞いていた。

「そ、ありがと。こっちも終わったわ」

「ありがとうございます」

「それにしてもフランの姿をしていたなんて……何者かしら?」

「私にもわかりませんがお嬢様ならきっと、勝てますよ」

 足を動かして調子を見ながら咲夜が断言した。

「どうかしら?」

 だが、私は一言で否定する。

「……どういう事ですか?」

「レミィにだって勝機はあるわ。敵にフランの能力がなければの話だけど。だって、フランのスペルを使ってたんでしょ?」

「は、はい……」

「じゃあ、能力を使っても不思議じゃない。しかも、相手は狂気に飲まれてる」

 後は言わなくてもわかるはずだ。

「お、お嬢様っ!?」

 私の話を聞いて不安になったのか飛ばずに走り出す咲夜。

「ちょっと待ちなさい」

「で、ですが――」

「貴女が行っても足手まといだわ」

「くっ……」

 咲夜は足の怪我を見て奥歯を噛んだ。

「まぁ、見てるだけなら行ってもいいけどここまで余波が来るんだからあまり近づけないわよ?」

「それでも私は行きます!」

「……そう、なら私も行くわ。元々、そのつもりだったし。でも、貴女が手を出しそうになったら全力で止める。いい?」

「はい、わかりました……でも、いいんですか?」

 咲夜が困った顔をしながら聞いて来る。

「ん? 何が?」

「小悪魔ですよ。お使いに出したままじゃないですか?」

 そう言えば、咲夜の治療の途中にお使いを頼んでいた。

「ああ、いいのよ」

 手をひらひらと振って宙に浮き、図書館を後にする。

「あ、待ってください!」

 咲夜も急いで私に続いた。戦いは先ほどよりも激しくなっている。紅魔館全体が揺れるほどまで。

(壊れないかしら? 紅魔館)

 そう、思いながら飛行を続けた。



本来、フランドールの能力は物理的にしか作用しませんが、そこら辺は大目に見て下さい……
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 楼主| 发表于 2022-10-14 18:09:27 | 显示全部楼层
第32話 見えた希望と現れた絶望

「な、何なんだよ……この空間」

「一筋縄じゃ行かないと思ってたけどここまでとは思わなかったわ」

 血の海が広がる地面に降り立った矢先、俺はその場に座り込んでしまう。女も両手を血で濡らしながら呟く。

「このコスプレが持ってるスペルを全部使っても壊れないとは……どんだけ頑丈なんだ?」

 因みに表の俺がこのコスプレの能力で『リピートソング』の制限を破壊したらしく、ずっと同じ姿だ。

「まぁ、魂だからね。少しの衝撃で壊れてしまったら意味ないもの」

「それにしたって傷一つ付かないのはおかしいぞ」

 そう、俺と女がどれほど攻撃しても全く効いていないのだ。

「……まずいわね」

「ん? 何が?」

「表の貴方とそのコスプレ――フランドール・スカーレットが戦闘を始めたわ」

「見えてるの? 外の様子」

「ええ、狂気と少しだけ繋がってるから」

「へ~、で? 何がまずいんだ?」

 表の俺と戦ってくれた方が周りへの被害が少なくなる。戦いに夢中になるからだ。

「考えてみてよ。『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』。彼女らはその能力を使いながら戦ってるの。少しでも標準がずれたら?」

「木端微塵か……」

 そうなる前にここを破壊しないといけない。

「まぁ、貴方はこのままの方がいいと思うけど……」

「は? 何言ってんだよ。このまま、狂気に体を譲れって事かよ?」

「考えなかったの? どうして、魂を分けたか」

 そう言われればそうだ。

「もしかして、狂気か?」

「そう、完全に貴方と狂気を離さないと貴方が狂気に飲み込まれていたのよ」

「じゃ、じゃあ、もしこの空間を壊したら?」

「……貴方と狂気。どちらが勝つかしらね?」

 俺の問いに答えるのではなくニヤリと笑って女はそう言った。

「……いいぜ。やってやる」

「本当にいいの? 結局、飲み込まれるかもしれないわよ? ただ、壊した方が可能性あるってだけで、確実じゃないの。そこはわかってる?」

「わかってるよ。でもよ? 逆に言えば俺が勝つかもしれないだろ? このまま諦めるなんて出来ねー」

 俺が一番、嫌いな事でもある。その場でうじうじするなら突っ込んで玉砕した方がいい。動かなければ何も変わらないのだから――。

「……この空間は打撃じゃ壊れない。でも、壊す方法が一つだけあるの」

「ほ、本当か?」

「ええ、本当は無理だったんだけど貴方はとことん運がいいみたいね?」

「は?」

 意味が分からず、呆けてしまった。

「そのコスプレよ。貴方、今までに見えなかった物が見えてない?」

「今までに見た事がないもの?」

 辺りをキョロキョロと見渡す。

「いや、そんなのみえ……ん?」

 そう言おうとしたが、女の体に一つの光が見えた。

「見えたようね。それは『目』よ」

「『目』……確か、緊張する一点だったっけ?」

「あ、知ってた? そのコスプレは『目』を右手に集めて壊せるの」

 『目』を壊してしまったらその物体は破壊される。

「じゃあ、これを使えば……」

「そう言う事。貴方の能力でこの空間の『目』を破壊すればいいってわけよ」

「な、なるほど! 早速、やってみるわ!」

 再び、見渡す。

「……あった!」

 淡い光が浮かんでいる。それを右手に集めた。

「これを握ればいいんだな?」

「私は見えないから分からないけど多分ね」

「無責任だな。まぁ、いいけど……」

 そして、俺は力強く右手を握った。



「す、すごいです……」

 思わず、呟いてしまう。

「本当にあいつは強いよ。ま、弾幕ごっこでは私の方が強いけどな!」

 丁度、フランさんが響ちゃんを吹き飛ばして壁に激突させている。

「そりゃ、コピーが本物に勝てるはずがないでしょ?」

 レミリアさんは最初から心配などしていなかったようだ。

「そのようね」

 急に後ろから声が聞こえ、振り向くとパチュリーさんと足に包帯を巻いた咲夜さんがいた。

「お? パチュリーじゃないか。来たのか?」

「来たからここにいるのよ。無駄足だったようだけど」

「そうみたいだな!」

 魔理沙さんが大笑いして、答える。咲夜さんはそんな魔理沙さんの隣を横切り、レミリアさんの元へ駆け寄る。

「……」

 皆が安心している中で霊夢さんだけは深刻そうな表情を浮かべていた。



「もう終わり?」

 壁に埋まった敵に声をかける私。

「……」

 返事はしなかったが代わりに壁を能力で破壊し、這い出て来た。

「まだ戦えるみたいだね。でも、貴女は私には勝てないよ? コピーだもん」

「ふ、ふふふ……」

 急に敵は笑い出した。

「?」

「どうして、狂気(私)がこの体の中にいるのか。疑問に思わなかった?」

「……」

 それは最初から気になっていた。

「気になってるようだな。じゃあ、これからもっと面白い物を見せてやろう」

「面白い物?」

「さぁ、第2回戦と行こうか?」

(よくわかんないけどまずい!)

「禁弾『スターボウブレイク』!」

 スペルを発動し七色の矢を放つ。

「もう、遅い」

 矢が着弾する前に敵の呟きが聞こえた。



「……あれ?」

 何回も手を握るが空間は壊れない。

「どうしたの?」

「壊れないんだ」

「え!? 嘘!?」

「本当だって! 確かに『目』を右手に集めてるし能力も発動してる。でも、壊れない!」

 もう一度、握るが何も起きなかった。

「どうなって……ん?」

 空間をよく見るともう一つ、光があった。

(ま、まさか……)

「おい! 女!」

「何!? こっちは他の方法がないか考えてるんだけど!」

 女も焦っているようだ。

「この空間って本当に狂気がいた空間だけなのか?」

「……いえ、私がいた空間も混ざってる。どうやら、魂逆転の衝撃でくっ付いちゃったようなの」

「それだ! この空間には『目』が二つある!」

 一つは狂気のいた空間の『目』でもう一つは女がいた空間の『目』。物理的に不可能だが、ここは魂の中。何が起きたって不思議じゃない。

「じゃ、じゃあ! 二つとも破壊しなさい!」

「無理!」

 即答する俺。

「ど、どうして!」

「さっきからやってるからだよ! 多分、俺には二つ同時に破壊する事は出来ない。まぁ、フランドールって奴は出来ると思うが……」

「もしかして、能力を上手く使いこなせていないの?」

「そう言う事。もっと言うとコスプレの能力は全体的に使いこなせない。紫の時だってスキマを開く時、扇子がないとダメだし」

「そ、そんな……せっかく、ここまで来たのに」

(ここまで?)

「どういう事?」

 今の言葉に違和感を覚え、質問する。

「……貴方は考えなかったの? どうして、私や狂気が普通の人間だったはずの貴方の中にいる事を」

「あ……」

「何年前だったかしら? 貴方は……ッ!?」

 語り始めた女が急に顔を歪めて胸を押さえる。

「ど、どうした!?」

「まずいわ。狂気が私を吸収する気みたい」

「きゅ、吸収!?」

 見ると女の翼が消え始めていた。

「う、受け取りなさい!」

 呆然とその様子を見ていると女の人差し指が俺のおでこに触れる。

「な、何を……くっ!?」

 意味が分からず、困惑していると何かが頭の中に流れ込んでくる気配がした。

(な、何なんだよ。これ!)

 視界が白くなる。そして、何かの映像が視えた。小さい頃の俺と固く閉ざされた大きなドア。俺の手には本があり、それを声に出して読んでいるようだ。どうやら、ドアの向こうにいる誰かに読み聞かせているらしい。

「問題は『目』を破壊する方法ね。何かおもいつ……ああっ!?」

 女が悲鳴を上げる。丁度、女の下半身が消えたところだ。残るは胴体と頭のみ。

「だ、大丈夫か!?」

「いいから、考えなさい! 方法を!」

「方法ならなくはないが……無理だ」

「言ってみなさい」

 そう言われ、方法を女に伝える。

「それで行きましょう」

「はぁっ!? 無理に決まってるだろ!? だって――」

「知ってる?」

 俺の言葉を遮った胴体もない女は微笑んだ。

「な、何を?」



「幻想郷には常識は通用しないのよ?」



「常識……」

「貴方と私は繋がった。だから、外の様子も狂気を通して私に。私を通して貴方にも見えるようになった。こっちはどうにかするから貴方もどうにかしなさい! この作戦は貴方とあの子の力が必要なんでしょ? 私が繋ぐから!」

「お、おい!! まだ、話は終わってない!」

「頑張りなさい。響」

 女はそう言い残して完全に消えてしまった。

「どうにかって……どうする事も」

 映像はまだ続いている。俺は図書館で本を読んでいるようだ。そこに現れる今、俺が着ている服と同じ服を着た小さな悪魔――フランドール・スカーレット。

(え?)

 この映像が本物なら小さい頃にフランドールと会っていた事になる。つまり、俺は幻想郷に来た事がある。

「ま、待てよ!」

 誰もいない空間に響く悲鳴。こんな記憶、俺は覚えていない。確かに年齢は5歳ぐらいだから覚えていない事もあるはずだ。

「っ!?」

 映像の中で俺はフランドールに八つ裂きにされた。これほどまでに強烈な記憶を忘れるなんてあり得ない。

「何が……どうなってやがる」

 静かにそう呟いた。



「何が……どうなってるの?」

 敵の背中から新たな翼が生えた。お姉様のような漆黒の翼。だが、筋は私の翼の枯れ木のようになっている。まるで、お姉様と私の翼を組み合わせたような翼だった。

「フラン! 危ない!」

「え?」

 お姉様の声で正気に戻る。その刹那、お腹に凄まじい衝撃が襲った。

「がっ……」

 何が起こったか分からない。一瞬、浮遊感を覚えた後に真後ろに吹っ飛ばされた。勢いで体が出鱈目に回転する。そのまま後ろにいたお姉様たちを軽く飛び越え、紅魔館の長い廊下をノーバウンドで突き進む。

(う、嘘……でしょ?)

 ぐるぐる回る視界。どちらが上か下か。右か左か分からなくなる。回転速度は勢いを増し、吐き気を催す。

「――ッ!?」

 どれほど長い廊下でも終わりはいつか来る。私は背中から壁に衝突。あまりにも威力がありすぎて、クレーターが出来る。その声にならない悲鳴が漏れた。

(そ、そんなコピーなんかに……)

 遠くにいる敵の勝ち誇った笑顔を見ながら私は意識を手放す。最後に見たのは右腕を突き出した格好でこちらを見てニヤリと笑っている敵の姿だった。
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 楼主| 发表于 2022-10-14 18:13:14 | 显示全部楼层
第33話 女の抵抗

「そうかよ……そう言う事だったのかよ!」

 映像は終わり、その場で叫ぶ。

「くそ……ふざけんなよ」

 女や狂気が何故、俺の中にいたのかやっと分かった。他にも色々と理解した。知りたくなかった事も――。

「ん?」

 映像が消えたと思ったが今度は違う風景が見える。真っ赤な廊下だ。女が言っていた狂気が見ている景色なのかもしれない。

 少し離れた所にこちらに背を向けた大きな漆黒の翼を生やした小さい女の子と魔理沙、早苗、メイドさん。逆にこちらを見ている霊夢に射命丸。更に映像の中で見た図書館にいた人――パチュリーさんだったはずだ。小さい頃の俺はそう呼んでいた。ならば、あの小さい女の子はレミリアかもしれない。

『次は誰だ?』

 俺の声で狂気がしゃべった。

(次? 女が言うにはフランドールが戦っていたはずだ。でも、フランドールの姿はない。もしかして……)

 悔しそうにレミリアが振り返った。やはり、フランドールはやられてしまったようだ。

『私が相手だ!』

 魔理沙が名乗りを上げた。

『やめなさい。八卦炉なしじゃ無理よ』

 だが、霊夢がそれを阻止する。

(八卦炉? あの極太レーザーを出すあれか?)

 どうやら、魔理沙は八卦炉を紛失してしまったらしい。

『やっぱり、私が行くしかないわ』

 お祓い棒を握って前に出る霊夢。

『そもそも人間がどうにか出来る相手じゃない。パチェ、手伝って』

『まぁ、来てよかったみたいね』

 しかし、今度は霊夢を押しのけて魔導書を開きながらパチュリーがレミリアの隣に移動する。レミリアも魔力を放出し始めた。

『咲夜はフランをお願い』

『は、はい!』

 咲夜と呼ばれたメイドさんが先ほどまでレミリアが見ていた方向へ飛んで行った。

『……』

 狂気は黙って跳躍し、レミリアとパチュリーの元へ突進する。

『レミィ? 大丈夫?』

『休んだからね。あいつを殺したくてたまらないわ』

 レミリアの目が鋭くなったと思ったら視界から消えた。それを追うように視界が横にずれる。

「狂気には見えてるってのか?」

 その証拠に視界にレミリアが飛び込んで来た。片手に真紅の槍を構え、先端をこちらに向けている。

『禁忌『レーヴァテイン』』

 フランドールのスペルを発動し、炎の剣を左手に持つ。その炎の剣を伸ばし、横に薙ぎ払った。

『くっ!?』

 それを槍で受け止めたがレミリアは壁まで吹き飛ばされる。

『水符『プリンセスウンディネ』!』

 その隙を突いてパチュリーがスペルを唱え、大玉とレーザーを撃って来る。狂気は剣でそれを弾く。

『っ!?』

 その瞬間、水蒸気が大量に発生した。パチュリーは水の魔法を使っていたらしく、炎の剣で水が一瞬にして蒸発したようだ。一瞬、怯んだ狂気だったが翼を大きく羽ばたき、水蒸気を吹き飛ばす。そして、槍を持って全力で突っ込んで来るレミリアを発見した。パチュリーが水蒸気を発生させ、狂気の視界が悪くなっている内に攻撃を仕掛ける。パチュリーとレミリアのコンビネーションアタックだ。この距離では狂気も躱せまい。

『愚かなり』

「っ! まずい!」

 狂気の背中には4枚の翼がある。その内、先ほど羽ばたいたのは漆黒の翼――女の翼だ。つまり、まだフランドールの翼が残っている。

『ぐっ!』

 左翼で槍を叩き、槍の軌道を少し右寄りにずらす。更に右翼で槍を掴んで思いっきり右に引っ張った。すると槍は狂気を捉える事もなく狂気の右側を通り過ぎてしまい、勢い余ったレミリアはそのまま壁に激突した。

『れ、レミィ!』

『人の心配か?』

『しまっ――』

 狂気が高速移動でパチュリーの背後に回り、裏拳を放つ。パチュリーは何も出来ずにレミリアが突っ込んで行った方へ飛ばされる。そのまま壁から抜け出したレミリアにぶつかった。その衝撃で壁が崩れ、レミリアたちの上へ降り注ぐ。あれでは身動きが取れない。

『さて……後は人間だけか』

『まだ私がいますよ?』

 射命丸がカメラを仕舞って前へ出る。

『天狗か……』

「そうはさせないわよ?」

≪っ!?≫

 狂気も含め、全員が目を見開いた。

『きゅ、吸血鬼!?』

「貴女の自由にはさせない」

 同じ口から口調が違う言葉が漏れる。

『お、おい? どうしたんだ?』

『あれじゃまるで響ちゃんの口を使って狂気と誰かさんが言い争ってるみたいです』

 魔理沙と早苗は目をぱちくりさせている。

『今の内よ! 早苗! レミリアたちを引っ張り出さないと!』

 霊夢は狂気の横を通り過ぎて瓦礫に埋まったレミリアたちを助けに行った。慌てたように早苗もついて行く。

『く、くそ! 邪魔をするな!』

「響! 聞きなさい!」

「っ!?」

 急に声をかけられ肩をビクッと震わせる。

『な、何をするつもりだ!?』

「貴女は黙ってて! 空間を壊したら私と狂気を同じ空間に閉じ込めなさい!」

「ど、どういう事だよ!」

 虚空に向けて叫ぶ。だが、俺の言葉は女には聞こえていないようで続けた。

「そうすれば一生、私と狂気に会う事もない! 私が責任を持って封印するから!」

『霊夢さん、あれは一体?』

『きっと、狂気が取り込んだ何かね。元々、響の中にいたんじゃないかしら?』

 会話しながら気を失ったレミリアとパチュリーを背負って霊夢と早苗は飛び去った。

『射命丸! 逃げるぞ!』

『あやややや~! でも、どこへ?』

『図書館だ!』

 魔理沙は箒に乗って射命丸に指示する。

「そこの魔女!」

『私は魔法使いだ!』

「何でもいいからパス!」

 女はポケットから俺の携帯を魔理沙に投げ渡した。

『な、何なんだ? これ』

「いいから! 行きなさい! 抑えられるのも限界があるの!」

『……わかった。行くぞ!』

『はい!』

 魔理沙と射命丸も図書館に向かって飛んで行った。途中で咲夜とフランドールも合流する。

『くそ野郎が……』

 獲物を逃がしてしまったので顔を歪ませる狂気。

「最後に響。貴方は今、私と狂気と繋がっているの。それを断ち切るわ」

「え?」

 女とは繋がっているのは知っていたが狂気とも繋がっているなんて思わなかった。

『ば、馬鹿! やめろ!』

 狂気が初めて焦った。

「そうすれば貴方が狂気に勝った時、魂の奥底に封印しやすくなるはず。その時に私も封印しなさい。そうすれば、晴れて貴方は人間よ」

『吸血鬼! お前も封印されるんだぞ! それでもいいのか!?』

「じゃあ、さよならね。短い間だったけど楽しかったわ」

 狂気を無視して女――吸血鬼が別れを告げる。

「お、おい! 待てよ!」

 俺の叫びも空しく映像が途切れた。



「よくもやってくれたな」

「まぁ、ね。これで貴女の力が弱まったわ。全く、魂逆転のどさくさに紛れて響にパイプを繋げてんじゃないわよ」

「そのおかげで随分、助かったけどな。でも、惜しかったな。残ったのは人間と天狗のみ。天狗なら今の私でも勝てる」

「頑張りなさい。そして、一緒に封印されましょ?」

「やなこった。お前は黙ってろ」

 狂気と吸血鬼の言い争いはここで終わった。狂気が吸血鬼を封じ込めたのだ。

「確か、図書館だったな」

 狂気は4枚の翼を動かし、飛翔した。

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 楼主| 发表于 2022-10-14 18:15:55 | 显示全部楼层
第34話 キュッとして――

「これからどうするんです? 響ちゃんの中にいた人が抑えててくれても少しの間だと思いますけど」

 レミリアさん、フランさん、パチュリーさんを図書館にあったソファに寝かせた後、図書館にいる全員に質問する。

「やっぱり、私たちで何とかするしかないな」

 魔理沙さんが腕を組みながら呟いた。

「でも、強いわよ?」

 霊夢さんが椅子に座って言う。

「せめて、八卦炉があればな。マスパをブチ込んでやるのに」

「マスパ……魔理沙、早苗。ちょっといい?」

「何でしょう?」「何だ?」

「試したい事があるんだけど」

「あ、おかえりなさい……っ!? どうしたんですか!?」

 霊夢さんから詳しい話を聞こうとした矢先、小悪魔さんが違うソファの影から顔を出して驚く。

「それがですね――」

 文さんが今までにあった事を伝えようとしたらどこからか携帯の着信音が鳴り響く。だが、幻想郷に携帯などない。

「な、何だ!?」

 魔理沙さんが叫びながら帽子から携帯を取り出す。バイブレーション機能に驚いたらしい。

「ま、魔理沙さん! それをどこで!?」

 携帯を摘まんでおろおろしている魔理沙さんに問いかける。

「ど、どこって響から……」

「ちょっと貸してください!」

 乱暴に携帯を受け取って、通話ボタンを押した。

「もしもし!」

『……早苗か?』

「きょ、響ちゃん!?」

「どうしたんだ? 独り言か?」

「違います! これは携帯と言って遠くにいる人と会話が出来る機械です」

 早口で魔理沙さんに説明し、携帯の向こうにいる響ちゃんに集中する。

『大丈夫か?』

「はい、今は」

『そうか……なぁ、フランドールは?』

「フランさん? フランさんはまだ気を失っています」

 チラッと横目で確認し、伝える。

『あ、皆に聞こえるようにしてくれないか?』

「了解です」

 携帯を操作する。響ちゃんの声が大きくなる。それを聞いて霊夢さんたちが目を見開くのが見えた。やはり、こういうのには慣れていないようだ。

『あとな……』

「はい、何でしょう?」

『これ、ビデオ電話だ』

(ビデオ電話?)

「も、もしかして?」

『ずっと、お前の耳が映ってる』

「……ごめんなさい」

 謝りながら響ちゃんの携帯を耳から離し、画面を見る。すると、フランさんの服を着た苦笑いをしている響ちゃんの姿があった。恥ずかしくて顔が赤くなるのがわかった。

『いや、別に……』

「『……』」

 しばらく、沈黙が流れる。

『……フランドールを起こしてくれないか?』

 先ほどの事は一先ず、置いておく事にしたらしい響ちゃんが真剣な顔で頼んで来た。

「で、でも……下手に動かすのは」

「だ、大丈夫だよ? 私は」

 ソファから顔を引きつらせたフランさんが顔を出す。文さんに支えて貰っている事からかなりダメージを受けているのがわかる。

『フランドール』

 画面越しからフランさんが見えたのか響ちゃんが呼びかける。

「小さい人だね? しかも、平面だ。あれ? さっきの敵と似てる?」

『頼みがある』

 フランさんの言葉を無視してそう続けた。

「……それって私にしか出来ない事?」

『ああ、俺とお前にしか出来ない事だ』

「なら、貴女がやればいいじゃん?」

『少し言い方を間違えたな。俺とお前、一緒じゃないと出来ないんだ。頼む。狂気を倒したいんだ』

「……詳しく話して」

『じゃあ、二人で』

「わかった」

 フランさんは私から携帯を奪って図書館の奥へ飛んで行った。

「ちょ、ちょっと!」

 追いかける為に飛ぼうとするが霊夢さんに肩を掴まれる。

「早苗、貴女はこっち」

「……大丈夫でしょうか?」

「きっと大丈夫よ。私たちに出来る事をしましょ?」

「は、はい」



「で? 頼みごとって?」

 小さな箱のような物の中にいる私と同じ服を着た女に質問する。

『まぁ、待て。まずは自己紹介でもしようじゃないか』

「? まぁ、いいけど。私はフランドール・スカーレット。吸血鬼だよ」

『俺は音無 響。えっと……人間?』

 響は首を傾げながら言った。名前を聞いて一瞬、あの男の子を思い出す。

(でも、あり得ないし……)

「いや、私に聞かれても……」

 名前が同じだけだと自己解決した。

『なんか不安定なんだよ。俺の存在ってさ。さっき、知ったし』

「不安定?」

 今度は私が首を傾げる。よく意味が分からなかったのだ。

『お前、人間が吸血鬼の血を飲むとどうなるか知ってるよな?』

「う、うん……」

『どうやら、俺も小さい頃、飲んだらしい』

「え?」

『俺は一切、記憶にないけど俺の中にいた吸血鬼に記憶を貰った。いや、記憶のコピーを俺の頭に張り付けたとでも言うのかな?』

 顎に手を当てて悩み始める響。

「ちょ、ちょっと待って! 意味が分からないんだけど!」

『まぁ……何だ? 俺はお前の血を飲んだ。きっと、お前も覚えてると思うけど……ね?フランさん?』

「あ、あり得ない!」

 小さな箱を掴む手に力が籠り、ひび割れた。

『ば、馬鹿! 壊れたらどうすんだ!』

「響はキョウだって言うの!? ふざけないで! そんなのあり得ないんだから!」

『幻想郷では常識に囚われてはいけないんじゃないのか?』

「だって……だって! あれは60年以上前の話だよ!? キョウには少ししか血を飲ませてないから完全に吸血鬼化はしなかった。だから、人間と同じように年を取るはずだよ!」

 叫んだ拍子に箱に唾が飛ぶ。それほど私は動揺しているのだ。

『え? そうなの?』

「貴女がそう言ったんじゃない!」

『年代までは知らないんだよ! 言ったろ! 俺の見た記憶はコピーだからきちんと年代がわかる物が記憶に残ってないと判断出来ねーんだよ!』

 歯をむき出しにして威嚇し合う。

『……覚えてるか? 人間と吸血鬼の恋の物語』

「っ!?」

『まさか、あれがレミリアの昔話だとは思わなかったよな』

「ど、どうしてそれを?」

 咲夜さえ知らない事を知っているのだ。驚くに決まっている。

『だから言ったろ? キョウだって。さて、フラン。協力してくれるか?』

「……」

 まだ分からない事だらけだ。だが、もし響の言っている事が本当で響がキョウならば今回の事件は――。



「全部、私のせい……」



 キョウに血を飲ませた時に私の中にいた狂気が移った。そうとしか考えられない。私があの時、狂気に飲み込まれなかったらキョウに血を飲ませる事もなかった。

『それは違う!』

 しかし、響は即座に否定した。

「え?」

『どうしてフランの部屋に行かなくなったか知ってるか?』

「……」

 知らない。お姉様に聞きもしなかった。黙っていると響は続きを話す。

『それはレミリアに止められたからだ』

「お姉様に?」

『ああ、フランに関わるなと言われて従ってしまった。怖かったんだ。従わなければ殺されると思った』

「普通そうでしょ?」

 人間が吸血鬼に恐怖心を抱かない方が不自然だ。

『……実は俺、あれから何回もお前の部屋の前に行ってるんだよ。本を持って』

「嘘……」

 驚愕で手が震えた。箱を落としそうになり、慌てて掴み直す。

『ノックしようと手を動かした瞬間、体が震えた。レミリアの紅い目を思い出したんだ。何回も挑戦した。でも……駄目だった』

「き、気付かなかった……」

『お前が図書館に来た時も持って行く本を決めていた。だから、俺のせいでもある。自分を責めるのはやめろ』

「……私は、何をすればいい?」

 気が付くとそう聞いていた。

『え?』

「頼み事。教えて? 私は何が出来る?」

『……さんきゅ。じゃあ、説明するぞ』

 響は自分がいる空間を破壊したい。だが、『目』は二つあり同時に破壊しないといけない。響の能力はコピーなので私より劣っているらしく、操れる『目』は1つだけとの事だ。

『どうだ? 二つ同時に破壊できるか?』

「やった事ないけど……やってみる。『目』はどこ?」

『今、映す』

 箱の中にいる響が見えなくなり、代わりに『目』を見る事が出来た。

「集めたよ。もう一つは?」

『ああ、待ってろ』

 また景色が変わり、『目』が現れる。集めようとするが上手く右手に収まらない。

「う~ん……二つ同時は無理かも? なんかいつもと勝手が違うからかな?」

『やっぱりか……でも、一つは集められたんだろ?』

「それは大丈夫……本当だ。壊れない」

 手を握って見るが空間は壊れた様子はない。

『よし、俺も集めるから同時に行くぞ』

「オーケー」

 先ほど集められなかった『目』が響の右手に集められる。

『3……2……1!』

 響の合図で右手を握る。

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 楼主| 发表于 2022-10-14 18:21:18 | 显示全部楼层
第35話 ――ドカーン

『ぐッ!?』「きゃあ!?」

 私と響が右手を握った瞬間、外部から何者かに邪魔され、体が後ろに吹き飛んだ。そのまま、背後の本棚に背中を強打する。

『だ、大丈夫か?』

「う、うん……何とか」

 箱から響のうめき声が聞こえる事から私と同じように吹き飛ばされたらしい。背中を擦りながら立ち上がる。

「でも、何が?」

『多分、狂気だな。魂逆転の時にこの空間に結界でも貼ったんだろ? こうやって、壊されないようにな』

「じゃ、じゃあどうするの!?」

 このままでは狂気が図書館に乗り込んで来てしまう。

『どうにかして狂気の動きを止めるしかない』

「動きを?」

『ああ。お前には分かんなかったと思うけど右手を握った時に狂気が何かをする気配があった。きっと、結界を貼っていても意識しないと今のように邪魔できないんだと思う』

「でも、動きを止めるって言っても……」

「それはまかせて」

『「え?」』

 急に後ろから声が聞こえ、振り返ったら傷だらけのお姉様がいた。その後ろには他の皆も立っている

「お、お姉様!?」

「久しぶりね。キョウ」

『ああ』

 響は落ち着いた様子でお姉様に返事をする。

「話は聞いたわ。あの化け物を止めればいいのね?」

『一応、俺なんだけど……』

 お姉様の言葉に苦笑いする響。何か悔しい。

『でも、どうにか出来るのか?』

「これからそれを話し合うの。時間はないけどね」

 その時、図書館の入り口から轟音が聞こえた。

「早速、来たみたい。パチェ? どれぐらい持つ?」

「フランの能力対策はしてるけどあの馬鹿力を考えると……10分?」

 パチュリーは首を傾げながら答える。あまり自信はないようだ。

「それだけあれば何かは思いつくでしょ」

『……まず、誰がどんな事が出来るか知りたいな』

「それじゃ、自己紹介から始めましょ?」

 狂気がドアは破壊するまで作戦会議は続いた。



『このやろッ!!』

 狂気の声が聞こえたと思った矢先、図書館の扉が崩壊した。それを俺たちは黙って見ている。

『15分……もしかして、狂気の力が弱まってる?』

「かもな」

 レミリアに質問され、答える。俺と繋がっていた時、俺自身の力も利用していたのかもしれない。その間に狂気はゆっくりと図書館に乗り込んで来た。

『じゃあ、皆! 作戦通りに!』

 レミリアの号令にそれぞれが答え、パチュリーがスペルを唱える。

『火水木金土符『賢者の石』!』

 パチュリーの周りに5つの結晶が現れた。狂気はそれを見て右手を突き出す。フランの能力を使う気だ。

『レッドマジック!』

 レミリアがスペルを発動し、大玉が反射しながら狂気に突進する。狂気は舌打ちし、右手を引いてからジャンプして躱す。その隙にパチュリーは賢者の石を魔理沙に渡した。

『絶対、返しなさいよ?』

『ああ、死んだら返すぜ?』

『禁弾『スターボウブレイク』』

 だが、狂気がパチュリーと魔理沙目掛けて七色の矢を放つ。

『夢符『二重結界』!』

 それを霊夢が防ぐ。しかし、矢の威力が凄まじく2枚の結界は破られてしまう。その隙にパチュリーと魔理沙は移動し、矢は図書館の床を抉る。

『じゃあ、貴女はここで死ぬつもりなんだ』

 パチュリーがそう言いながらジト目で魔理沙を睨む。

『いや、そのつもりはない!』

 魔理沙が答え、パチュリーは首を横に振って呆れていた。

『これはどうだ?』

 狂気は矢を上に放ち、分裂する。何本もの矢が俺たちに降りかかる。

『響!』

「おう! 小悪魔、画面を少し左に」

『は、はい!』

 フランに名前を呼ばれ、携帯を持っている小悪魔に指示を出す。俺は一度に一回しか能力を使えない。

「フラン、頑張れよ!」

『出来るだけ壊すけど残ったのをお願い!』

 そう叫びながらフランが右手を握った。しかし、矢は2~3本残っており、その内の一本が早苗を目指して直進している。

「おら!」

 その矢の『目』を集め、右手を握って破壊する。

『魔理沙! 準備、出来たわ!』

 霊夢の頭上に大きな正八角形の立体の形をした結界が展開された。

『おう! 射命丸、頼む!』

『あいあいさ~!』

 魔理沙を背中から抱き上げて飛び上がる射命丸。出来るだけ魔力を消費しない為だ。

『好きにさせるか!』

 結界を破壊する為にまた右手を握る。

「させっかよ!」

 その動きに合わせて俺も右手を握り、破壊した。狂気の顔が怒りで歪む。

『パチュリー! 魔力!』

 結界に手を置いて魔理沙が叫んだ。

『もうやってるわよ』

 パチュリーが魔導書を開き、何かを呟く。それに応えるように魔理沙の周りに浮かんでいる5つの結晶が光り輝いた。

『おお!? これなら行けるぜ!』

 ニヤリと笑った魔理沙は魔力を結界に注ぎ込む。どんどん、結界から光があふれる。その光景は幻想的で綺麗だった。

「早苗!」

『は、はい!』

 それを眺めていた早苗に声をかける。自分の役割を忘れていたらしい。早苗が結界に向かう為に空を飛ぶ。それを見て霊夢も早苗に続いた。二人は魔理沙を挟み込むように空中に留まった。

『……なるほど。そう言う事か』

 狂気がこちらの作戦に気付き、高速で図書館を移動し始める。早苗は目で追うが俺から見ても翻弄されていた。

『れ、レミリアさん! お願いします!』

『わかったわ』

 そう返事をしてレミリアが目を閉じる。

「フラン」

『わかってるよ』

 俺とフランの右手に空間の『目』が集められる。後は狂気の動きを止めるだけだ。

『……嘘』

 レミリアの様子がおかしい。目を見開いて驚愕していた。

「どうした?」

『運命が……見えない』

「え?」

 よく意味が分からず質問しようと口を開いたがその前に狂気がスペルを取り出して宣言した。

『QED『495年の波紋』』

『っ!? 皆、気を付けて! 反射するよ!』

 フランが叫んで警告する。フランの言う通り、狂気を中心に波状弾幕は図書館の壁に当たると反射し、こちらに向かって来た。

「皆、結界を守れ!」

『言われなくても! 紅符『不夜城レッド』!』

 レミリアの体から紅い霧が噴出され、弾を消した。

『禁弾『カタディオプト『やめなさい! 神槍『スピア・ザ・グングニル』!』

 我慢できず、フランがスペルを使おうとしたがレミリアが声だけで制止させ、今度は紅い槍を狂気に向かって投げる。だが、狂気は軽くそれを躱した。

『で、でも!』

『貴女は壊す事だけを考えなさい! こっちは何とかするから!』

『果たして出来るかな? 私の運命、見えないんだろ? 見えたら後ろで準備してる技も当てられたのにな。私の動きを予測すればね』

 狂気に言葉にレミリアは奥歯を噛む。今でも高速移動しながら弾幕を放っている狂気。これでは近づく事はおろか、弾幕を当てる事すら困難だ。

『右です!』

 しかし、霊夢、魔理沙、早苗、射命丸、レミリア、咲夜、パチュリー、小悪魔、フランの誰でもない声が図書館に響き渡る。その声に一番に反応したのは咲夜だった。

『そこ!』

 スカートからナイフを1本、取り出して誰もいない方角へ投げる。

『なっ!?』

 だが、次の瞬間には狂気がナイフの軌道上に現れる。狂気が目を見開いて驚いていた。

『くそっ!』

 狂気は翼でナイフを叩き落し、すぐに移動した。

『美鈴?』

 ソファの方を見ながら咲夜が懐かしい名前を口にする。

『すみません! 寝てました!』

 美鈴がペコペコ謝りながら咲夜の元へ駆け寄る。少し動きが鈍い。もしかしたら、狂気にやられて休んでいたのかもしれない。

『そう言えば、小悪魔に美鈴を連れてくるよう命令したっけ?』

『そう言えば、パチュリー様の命令で倒れていた美鈴さんを連れて来てそこのソファに寝かせましたっけ?』

『二人とも……私の存在って』

 パチュリーと小悪魔の呟きが聞こえた美鈴は涙を流して落ち込む。

「来るぞ!」

 そんな中、俺は話している3人に向かって叫んだ。狂気が炎の剣を左手に持って振りかぶっている。投げるつもりだ。

『水符『プリンセスウンディネ』!』

 パチュリーが水の魔法を駆使し、炎の剣を鎮火した。やはり、狂気の力が弱まっている。

『咲夜さん! 左から来ます!』

『っ!?』

 だが、炎の剣はフェイクで直接、咲夜に打撃を撃ち込もうと狂気が急接近して来ていた。それを美鈴は言い当てたのだ。咲夜はバックステップで狂気の攻撃を躱す。

『め、美鈴? どうして?』

『狂気の気を読みました。どちらから来るかぐらいならわかりますよ?』

「そ、それだ! 美鈴! 早苗に敵の位置を!」

『え!? こ、この声一体どこから!』

 携帯越しなので俺の気は読めないらしく、慌てながらキョロキョロしていた。

『美鈴さん! お願いします!』

 早苗が大声で美鈴にお願いする。時間がない。結界の光が先ほどより大きくなっているのだ。もう、充電が終わっている証拠だ。

『は、はい!』

 早苗がいる所まで飛翔する美鈴。

「咲夜? 行けそうか?」

 咲夜を見れば足の包帯が赤く染まっている。傷口が開いたらしい。

『私を誰だと思ってるの?』

(いや、お前には今日会ったばかりだし……)

『レミィ!』『パチェ!』

 パチュリーとレミリアが同時にお互いの名前を呼ぶ。これが合図だ。

「美鈴、場所!」

『正面に来ます!』

『日符『ロイヤルフレア』!』『紅色の幻想郷!』

 美鈴の言った場所に同時にスペルを発動。

『どうして場所がっ!?』

 正面に現れた狂気に巨大な炎の弾と大量の弾幕が襲う。それをジャンプして躱す狂気。そこしか逃げ場所がなかったのだ。それが狙い。

『メイド秘技『殺人ドール』!』

『っ!?』

 咲夜がスペルを唱えたと思った瞬間、たくさんのナイフが狂気の周りを取り囲む。更にナイフは動かずにその場に制止したままだ。ナイフは攻撃する為ではない。狂気の動きを止める為だ。

『くそ!』

 身動きが取れない狂気は右手を何度も握ってナイフを破壊して行く。狂気の体は俺の体だ。能力も規制されている。

『霊夢!』

 結界に触れたまま、魔理沙が隣にいる霊夢を呼んだ。

『わかってるわよ』

 そう呟きながら霊夢も手を結界に置く。更に結界の光が強くなる。

『さぁ、まかせたわよ? 早苗』

 ニヤリと笑いながら霊夢が早苗の名を呼ぶ。

『うぅ……責任重大です』

 早苗は唸りながら結界に触れる。甲高い音が図書館に響き渡った。

『文さん、コントロール難しいので調節お願いします』

『まかせてください!』

 魔理沙を抱き抱えたまま、射命丸が返事をする。

『では、行きます!』

 早苗が手に力を込めた。すると、結界の周りに風が吹き始める。風はどんどん強くなり、一点に集中する。結界の中心だ。

『『『合符『ウィンドスパーク』!!』』』

 三人が宣言すると風が結界の中に蓄積された魔力を勢いよく放出した。

 霊夢が土台となる八卦炉型の結界を作り、普段から八卦炉を使っている魔理沙が魔力を注入。その時にパチュリーの『賢者の石』で魔力を増幅。最後に早苗の『奇跡を起こす程度の能力』で生み出した神風に乗せて魔力を発射する技だ。威力は『ファイナルスパーク』を遥かに超える。そりゃそうだろう。三人の力が合わさっているのだから。

 レーザーはナイフを蹴散らしながら狂気に突進するが少し右にずれている。

「射命丸! 右にずれてる!」

 いち早く気付いた俺は叫んだ。

『了解です!』

 魔理沙を美鈴に預け、団扇を取り出し、振りかぶる。レーザーの原動力は魔力だが、風に乗って進んでいるので『風を操る程度の能力』を持っている射命丸は多少、操る事が出来るのだ。

『秘弾『そして誰もいなくなるか?』!』

 だが、狂気はスペルを発動し消えた。このままではレーザーは当たらない。

『させないわよ?』

 しかし、レミリアが横に手を振ると狂気の姿が現れた。

『な、何っ!?』

『わかったの。アナタの運命は操れない。でも、レーザーの運命を操ればいいってね』

 「レーザーが躱される運命」から「レーザーが命中する運命」へ。

『くそったれがあああああああ!!』

 破壊するのをやめて両手を前に突き出し、レーザーを正面から受け止めた。

『やりなさい! フラン! 響!』

『うん!』「おう!」

 これで狂気の動きは止められた。後は俺たちの仕事だ。

「キュッとして――」

 俺とフランはニヤリと笑う。狂気はそれを横目で見て顔を引き攣らせる。

『――ドカーン』

 その顔をよく見ながらそれをゆっくりと握り潰した。それからすぐに目の前がぐるりと一回転。狂気の魂から白い空間へ変わった。腕にあったPSPや手に持っていたスキホが消え失せる。

「人間が……よくも私の邪魔をしてくれたな」

 後ろから声が聞こえ、振り返る。そこにはまた俺がいた。だが、少し俺や吸血鬼と違った。身長は俺より低く女より大きい。胸は女よりないがすこしだけ膨らんでいる。髪はポニーテールではなくストレートだった。目は女と同じ真紅だったがこちらの方は黒が強い。しかし、八重歯は生えていなかった。背中にも何もない。

「まず、女だったんだな」

「吸血鬼は私の事、『貴女』と言っていたのに気付かなかったのか?」

「あの状況でそこまで気を回してらんねーよ」

「まぁ、そんな事はどうだっていい。お前を殺してまた体を乗っ取ってやる」

 狂気が重心を低くし、構える。

「させっかよ。もう、お前の思い通りにはさせない」

 俺も構える。PSPもない状態でどうやって戦うか考えていないが諦めたりしない。俺と狂気が同時に地面を蹴った。その刹那――。

「ちょっと待ってくれない?」

「「ッ!?」」

 急に吸血鬼が俺たち間に出現し、邪魔をする。

「いいのか? 出て来ても」

「いいの。でも、これだけは言わせてね」

「……いいだろう」

 狂気は腕組みをしてから渋々、頷いた。

「ありがと。響? よく、聞いてね。ここは区切られた魂が再び、1つになった事によって出来た空間。これが本来の貴方の魂なの」

 吸血鬼が俺の方を見て説明する。

「本来の魂?」

「そう。そして、ここでは気持ちで強さが決まる。生き残りたいと願えば願うほど強くなれる」

「そうか……」

「だから、安心して私たちを殺しなさい。それから、魂の奥深くに封印して」

 そこで俺は気付く。

「『私たち』?」

「ごめんなさい。まだ私は狂気に取り込まれたままなの。口は動かせるけど……体は」

「もういいか? じゃあ、無駄口を叩かず殺せ」

「全く……自分が誰のおかげで生まれたのかも忘れたの?」

 そう言いながら吸血鬼と狂気がこちらに向かって走って来る。

「気持ちの問題……」

 俺の気持ちは最初から決まっている。それに応えるように右手に小さな鎌が現れた。初めて持ったとは思えないほど手の感触が懐かしい。

「――」

 吸血鬼にも狂気にも聞こえないように呟いて鎌を構えながら走り出す。これが最後の戦いだ。



レミリアの能力もちょっと強くし過ぎた気がしますが、まぁ、気にしないでくださいww

そうそう、お気に入り登録数が2桁になりました!

皆さん、ありがとうございます!
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